12月
瀬崎 虎彦
12月
エヴァが未来はないと語った
僕は片手に花瓶を持ったまま
理不尽に暖かい12月の空にカーテンを開いた
人は心のはるかどこかに
過ぎ去りし恋の記憶を閉じ込めて
何も傷つかなかったように
忘れた振りをするくらい愚かだ
マフラーを取って
僕は風の中で
自転車に君を乗せて
背中越しに
君の今日の話を
聞いて笑って走る
僕の未来を信じるのなら
僕と一緒に歩いていたいなら
何も迷わず君の手を僕に差し伸べてくれたらいい
エヴァが未来はないと語った
ひどく難解な言葉でそう言った
部屋のテーブルの花が枯れるころ
その預言を忘れるだろう