プールの冬
番田
夏だというのに歩かされていく
コイン駐車場に
車を止めて 僕は
スーツを着なければならず
営業車で
知らない街を巡っていく 水の
温度はどのくらいだろう 裸で
日差しを存分に浴びているようだ
*
冷たい顔をした
人たちの中を
灰色のビルの中を歩いていく
ミシミシと音を立てる 子供たちは
歩いていく 所長の声も
荒くなりだして
ヒビ割れた
花瓶を 一つ割ったらしい
高級なものなのかを
想像した 昨日は
事務の女の子が ひとり
退社した
小さな声の人で 妹のようだった
所長から渡されたノルマは
ケタ違いの数字だった
先月は 僕は
受付のところの女性が好きだった
キャッキャと 次は
何泳ぎをするのだろう
ときおり 白いシャツから 下着が見えて
安物なのか 廊下のタイルが
*
自動販売機の横を通り抜けて 僕は
書類を持って
階段を登っていく
しかしノルマの日数は
近づいてくる 薄暗い
廊下の窓には
蜘蛛の巣が 張っていた
プールは 青々としている
田舎に増して 東京の