夏の軌跡
銀猫

眩しい舗道に
蝉、おちた

鳴くのをやめて
飛ぶのをやめて
褐色の羽根に
ちりちりと熱が這い上っても
黙って空を仰ぐ

  
  湿った真昼をまとい
  木陰にくっきり分けられた、
  アスファルトの白黒を辿ると
  燃え残った蝉時雨が降り注ぎ
  髪の奥まで濡れそぼる
  わたしには
  蝉ほどの潔さもなく
  夏を葬る風から
  後ずさり
  後ずさり


小さなからだは
間もなく轍のあとかた
そうして時が止まれば
夏を失うこともない
樹液より緩やかに滴る、
単調な音色は
刹那の七日
それ限り

かなしみはない
永遠もない
次の夏を待つばかり


 (待つ、ばかり)





自由詩 夏の軌跡 Copyright 銀猫 2009-08-27 21:28:59
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