まにまに
瀬崎 虎彦

まにまに

君の背中に空を見上げてた
決着はすでに着いている
失うよりずっと前に君は
僕の心を連れて旅に出た

知らない街の懐かしい場所も
懐かしい街の知らない場所も
素敵なものに出会えばいつも
「君に見せたい」と言ってくれた

パリで会いベルリンで別れた
春の雪をキャンベラで眺めた
風の速さに目を細めては
移ろう時に耳を澄ます

それは果てしない波のまにまに
あなたの声を聴くように
とめどない憧れだけで
どこまでゆけるかな?
終わらない雨に打たれて
あなたが愛を知るように
重ねる別れのあとで
途方に暮れるんだ

--

君の手紙を待ちわびて僕は
行き先も決めず旅に出た
冷たい風のコートの襟を立てて
次の列車に飛び乗った

人気のない避暑地の駅で降り
葉を落とした白樺の木立を
はじめて訪れる場所ではない
錯覚を覚えて歩いた

僕ならば変わり映えもせずに
日々のことを音楽で紡いで
いつかどこかで 君に会えたら
聞かせたい歌ばかりつもる

枯葉のざわめきの中で ながされてしまうのに
まばたきの後に君を見つけ出すんだ

声はいつも心に留まっている


自由詩 まにまに Copyright 瀬崎 虎彦 2009-08-27 13:14:24
notebook Home 戻る