ロックバー
松本 卓也

問いかける様に見つめられると
結局辿り付けない気になって
どんな言葉も相応しくないと
いつも口をつぐんでしまう

伝えたいことがあるのに
薄暗い照明と騒がしい音楽と
楽しげな笑い声に包まれて
酔って歌わなければならない僕は
なんて情けない男なのだろう

それが僕の音であれば
誰の言葉だって構いやしない
君の胸に届いてくれれば
そんなの独善に過ぎないなんて
分かりきっていたとしても

誰かの歌に祈りをこめて
声を張り上げ喉を震わし
視界から失わないようにしながら
目を合わせないよう怯えながら

曲が終わり溜息をつく
僕にグラスを勧めつつ
微笑む潤んだ唇を
今すぐにでも塞ぎたい



自由詩 ロックバー Copyright 松本 卓也 2009-08-25 00:07:06
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