「 帰り道 」
椎名

それと気づかせないくらい

ひそやかに雨が降る

フロントガラスに微かな水滴

ワイパーもいらないくらいに



夕暮れ時の街は

帰りを急ぐ車がせわしなく

まぶしいヘッドライトの川が流れる

歩道の人影など

目をやる隙もないくらいに



しびれるほどに疲れた頭に

飛び込んでくるものは

光の川

一日の残像

麻痺したような腕でハンドルを切る



ねえあなた

待っていてくれるかな

灯りをつけて



とびきりの笑顔をちょうだい

それが一番の薬

あたたかいぬくもりをちょうだい

それが一番の休息



何も語らない雨が

ひそやかにフロントガラスを濡らしている

通り過ぎる景色に

きらめきを添えて





自由詩 「 帰り道 」 Copyright 椎名 2004-09-09 23:36:22
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