夜明け前に、走る
within

朝焼けは随分きれいで
青紫のしじまに黙りこくり
そっとアクセルを踏み込む
見慣れた速度で
過ぎていく風景をやり過ごす
少し肌寒くなったようで
エアコンのスイッチを消した

仄かに燃えていた
白い炎を上げながら うずくまり
白い余白に文字を連ねた
微かに残る体温をなぞり
奇形の精子を吐き出し
治まらない熱を冷ました

朝が明ける前に海に行こう

昨日、川に流した笹舟が
きっと海に辿り着いているはずだから
果たされなかった約束を
贖いたくて
太陽が出る前に海を目指す
助手席には
蝉の抜け殻がひとつ


自由詩 夜明け前に、走る Copyright within 2009-08-23 21:23:16
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