ゆめ
瀬崎 虎彦

かなしみの淵をなぞるゆめ
鋭利なガラスで指を切るゆめ
開いた詩集を風が繰るゆめ
その一ページに血をこぼすゆめ

うすももいろの唇に
ぼくのインクで紅を引くゆめ
まだ汚されぬやわはだに
ぼくのナイフで傷のこすゆめ

淡いピンクと象牙としろで
なめらかすぎる肌を描くゆめ
テーブルの上の毒薬を
毒と知りつつのみくだすゆめ

炎がきえて目が覚めたとき
虚空の底で頬を濡らした


自由詩 ゆめ Copyright 瀬崎 虎彦 2009-08-23 17:07:16
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