ふるい名前
千波 一也
ここしばらくは
疲れ過ぎていたから
なんら記号と変わりなかった
わたしの名前
わたしを呼ぶひとは
わたしを必要としているけれど
その必要を満たすのが
わたしである必要は
どれほどだろうか
生きるということは、
傷むことなんだね
そっと
耐えることなんだね
じっと
これまでと
これからと
ひとりきりでも大丈夫
そんな弱みが
ひとりぼっちで震える頃に、
わたしだけを指す
ふるい呼び名が
聞こえ出す
戻ってはならない
なつかしい風上から
進みなさい、と声がする
逃げ出すことは、
やさしく見えて
厳しいからね
ちいさなわたしに守れるものは
この身のふるさと
あたらしさ
それが
奇跡とおもえる日まで
わたしはこの名を
生きていく
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【親愛なる者へ】