ゴロワーズの煙
熊野とろろ

一日が昨日の焼き増しでやりきれない
陽射しが薄いカーテンをくぐり抜け
ブラウン管の画面に撥ねる
ちくちくしたいらいらをぐるぐる
誰に噛みつくわけもなく
さして何になるわけもなく

街の中に飛び出したくて
仕方なくなるのはだいたい夜中で
原因は仲間と飲み明かした夜の
街の灯りが映画のようだったとか
バーボンのゴツい氷が
鍵盤を転がすように融けたとか
すべてが相俟って音楽だったとか
厚塗りを重ねた夜が忘れられないからだろう

ところで 本日の夕暮れの空は
青く澄み切っていて涼しげ
大の字に寝転がって
フランス製のタバコを吸った
雑念めまぐるしい一日
でも 音のない一日
煙はすぐに青に溶け込んだ
何処へ行く


自由詩 ゴロワーズの煙 Copyright 熊野とろろ 2009-08-21 18:58:49
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