『枕木の契る丘』
Leaf
青々と生い茂った広大な芝生の丘に乾いた細身の葉先が隙間無く犇めき合い、そっと朝露の雫を麦藁帽子代わりに被っては祈り誰かを待っている
其処は天と地を糸電話よりももっと古来の伝達で繋ぎ御魂捧げるグレイヴヤード
でも、声はしないんだ
行き掛けに立ち寄った移動式販売の花屋の前に捨てられていた季節外れの秋桜を片手に寝転がった丘の上
地表と上空の間で頬杖ついた時、確かに聴こえた禊月の契り
憩いの噴水に集うは見切り発車した伝書鳩が口ずさんだ口笛の音色だけ
齧り毟られる毎に其々が弛まず密接に寄り添った
アップタウンに住み慣れたヤッピー連中にはこの質素で豊潤な地の息吹は解るまい
欲望と云う名の列車は俺達枕木あってのレールの上で走り出せる、と云うことをカオスに屈しなかった墓前に誓うんだ
涙は何の為か、知っている
溢れたミルククラウンが針葉の先に点るみたいに朝露は清々しく煌めく
そして其れは過密な陽射しを避ける麦藁帽子になれるから
何気ない日常に微睡んだ滴は何より輝きを増していくんだよ
だから折角抱いた感情を無闇矢鱈に端折るのは止めにしようとおもったんだ
でも、でも、声はしないんだ