四行詩四態 <1>
nonya


「移」


知らぬ間に忍び込んだ次の季節を

昨日より微かに老いた眼差しでやり過ごす

移ろっていく速度のやるせない違いに

胸の奥をさざめかせながら運ばれていく




「揺」


枝葉が揺れて風を知る

水面が揺れて雨を知る

人は揺れながら情を受け取り

揺さぶられて弱さを思い知る




「傾」


僕のことをとても傾いていると言っていた君は

僕と反対側にかなり傾いていた

日々の上に真っ直ぐ立てないのなら

いっそのこと君と同じ方向に傾きたかった




「帰」


本当に帰る場所がありますか?

そこは途中下車じゃないですか?

本当に明日を待てる場所がありますか?

そこは騙し絵の水路じゃないですか?




自由詩 四行詩四態 <1> Copyright nonya 2009-08-19 23:59:03
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