川面
たもつ
いつもはわたしが列車を待っているのに
今日は列車がわたしを待っている
ホームにたどり着くと
列車たちは次々と
わたしの中に乗りこんでくる
発車を告げる音楽が鳴り止む
いつも列車がしてくれるみたいに
ゆっくりと出発する
冷房のつけ方がわからないので
せめて新鮮な空気を送れるように
大きく深呼吸する
鉄橋をわたる
濁った川面を小さな魚が跳ねて光る
かつてはあのような粗末なものも
宝物のように集めていた
いま自分は他の人からどのように見えるのか
気になるけれど、こんな日に限って
人っ子一人見つからない
次の駅に向かって
ひたすら線路を歩き続ける
もしかしたら明日は
わたしが線路かもしれない