パープル原野
熊野とろろ


どうにもいかないときがあって
パープル原野に辿り着いたってわけ
記憶はない
そういったほうがなにかと都合がいいし
なんたって享楽的

とはいっても昨夜
おれははじめて死を思った
出たとこ勝負の旅の洗礼を受けたのだ
360度、まったくの暗闇
「大自然を畏敬せよ」
だれかの言葉がぐさぐさ心臓に刺さった


昨夜の失敗を繰り返さぬよう
日が明けてからはひたすら自転車を走らせたよ

よく訊く青春っぽくってね
味気ないロードムービーよりも爽快でね

勢い余って柄でもなくサングラスなんか買っちゃって
気が付いたら3府県横断していた
ろくに眠れず、かなりの躁状態
瞳孔が開きギラギラしていた

ほとんど荷物を持たないで旅に出たけど
デジカメだけは持ってきたから
夕暮れの農村風景を撮ってみると
写真全体が紫がかっていた
その写真をパープル原野を名づけた

ダサいネーミング
昂ぶった感情で

僕は君に会いに来たんだよう!

と叫んだ


自由詩 パープル原野 Copyright 熊野とろろ 2009-08-18 17:40:04
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