事件
ゴースト(無月野青馬)

忘れられていくのですね
小さな爆発なんて
世間の人は皆
悲しむべき悲劇の内の1つなど
簡単に忘れてしまうのですね
小さな出来事だとして


男娼をさせられていた青年、子飼いの少女と連れ立って
通行人の頭蓋骨を陥没させる


飲み込まれてしまうのですね
これくらいの小さな爆発なんて
上書きされてしまうのですね
これくらいの小さな出来事なんて


明け方、寝てる乞食の頭蓋骨を陥没させる少女
可笑しな首の曲がり方をしているから、笑う
遠くから首を傾けた青年も笑いながら、見てる
見てる 見てる


それでも
忘れられてしまうのですね
飲み込まれてしまうのですね
彼等なんて
ポワッと浮かんだ泡の1つに過ぎないのですよね
大海を知らない蛙の方がまだマシですよね


世界の事件史を満たす
脳漿に 脳漿に
彼等も溺れていた
彼等も溺れていく
冷笑が 冷笑が
潜んでいく
世界の事件史を満たす
冷笑が
彼等のことも
嘲笑う


黒い噂の中に取り込まれて
黒い噂の中に辛うじて生き残り続けていく
そんな運命の
彼等です





自由詩 事件 Copyright ゴースト(無月野青馬) 2009-08-18 00:51:23
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