契り
乱太郎

緑葉生い茂る森の奥
君を抱きしめる

   最初で最後の交わり

なだらかな曲線を描いた
背中が微かに痙攣し
時折流し目で見つめる
君の瞳が切なくて

   僕はまもなく他界
   知っているはずなのに
   許してくれた君

可愛げな喘ぎ
息を詰まらせて

木漏れ日に誘われて
森の精に差し出される

   本当は
   僕の手も震えている
   千切れそうに

近くに教会があっただろうか
アヴェ・マリアの旋律
誰かが弾いているオルガン
天使に捧げるみたいに
小鳥たちまでさえずっている



ああ
そろそろ


使者がやってくる



さよならだ

ありがとう


最愛の君

運命には逆らえない





僕らは蝉だから


自由詩 契り Copyright 乱太郎 2009-08-17 16:14:17
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