帰還
西天 龍

車窓に悪態をつく
相変わらず灯りも少なく
溢れ出る水蒸気に煙る
陰鬱な故郷

まだ話はついていないと
背中で悪態をつく街を尻目に
「とりあえず帰る」と
戻ってきたけれど

駅から続く道をみあげたら
空が割れて笑われた
「手に余って戻ってきたのか
蛇蠍のごとく嫌った故郷に」

叩く扉の向こうにいる
母と友と
幼なかった頃の自分に言えるのは
「ただいま」なのだろうか

「まだ話はついていない」と
詰問する母や友や故郷に
「ただいま」と
言えるのだろうか


自由詩 帰還 Copyright 西天 龍 2009-08-16 08:41:16
notebook Home