げんそうはげんそんか。
志賀羽音

 げんそうを知りたかった。
 えいえんが分からないから。
 げんそうをどういうものか僕はみてみたかった。
 えいえんがなかったから。





 ほしとほしが干からびて補えなくなった時、ほしは日の下に生まれることはなく崩れ落ちた。月は抜け殻のように白くなって、雲は老けたように白くなって、青色だけが空に存在した。

「香箱を作る白い猫の目だけは、空の色をうつしているよ。
 地球のようなその目は、いったい世界の何をうつしているんだろうね。」





 少年は白い少女を抱きかかえている。少年と少女の背中に羽根はなかった。そもそも少年や少女に羽根があると誰が言った? 羽根は白い空から降るものだ。

「しかし、あなたには空から降る羽根は、
 みえやしない。」





 青空から青い鳥が落ちてきた。(青空は青い鳥に嫉妬していたのだろう。)白い月は薄く発光するだけで、黙って青空の角にいた。ほしは消えて無くなっていたので、クッキーにはアラザンがまぶされた。





(みえない。みない。みたくない。
 空は、ただの青。)





 青空の下に香箱を作る白い猫は、青い目を丸くして、世界をうつしつづけていた。


自由詩 げんそうはげんそんか。 Copyright 志賀羽音 2009-08-15 22:06:24
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