アレジオン
e.mei


クリームで前が見えないけれど
世界には青が降っている
炭酸を抜かないで
誰かの声を聴いた僕は夢中になって世界を振った





勢いよく噴出した青を二人の子供が飲んでいた
子供たちは夢中になって飲んでいた
さよならブルー
北十字から南十字まで転がっていったブルー
静かに眠る子供たちに青が近づいていくから
子供が神さまになって
世界はもう少しだけ優しくなれるようにした
星の場処なんて誰も知りやしない
青よりも青い場処に立って僕は目を閉じた
この町の青は透明に近い青だと思った
アンタレスを観測する場処は既に閉鎖されてしまっていて
どれがアンタレスかわからなくなっても
この青い町から見えるのは綺麗な赤だった
もうすぐ秋になるのだろう
冬になれば青にかわって白がくる
青い空から青い雨が降るので
僕は目を閉じた
僕から抜けていったのは炭酸ではなくて
愛している
と云う言葉だったのかもしれない





あの日の帰り道に友人がクリームに溺れて死んだ
そう聞いたのは数週間が経った日のことだった
天国から降ってきているかのようなどしゃぶりの青のなかで
僕は二人の子供がかわらずにそこにいたのをただ眺めていた
その次の夜もまた次の夜も
ソーダはたえることなく降り続けて
二人の子供はずっと
クリームに溺れながらソーダを飲んでいた





隣町の女が妊娠したらしいと誰かが言った
あたらしい
あたらしい何かが宿ったのだから世界も
僕も何か変わるのだろう
いつからか僕もクリームにまみれていた





炭酸が目にしみると子供が言い出したのは今年に入ってからだ
炭酸が目にしみることを知ったのはいつからか
僕はいつの間にかそういうものだと覚えていた
炭酸は目にしみる
生まれてくる子供の目にもいつか炭酸が目にしみる日がくる
僕はそう思った
生まれてくる子が男か女かなんてのは些細な
本当に些細な問題で
どうにもならないと言うのなら目を閉じれば良いだけだ
そして夢を見よう
あたらしい
あたらしい夢を見よう
そして全部忘れてしまわないか





子供たちが去っていったのは僕の生まれた日
新しい世界の誕生もまたその日の朝だった
クリームが少しばかり多めに降っていたから目は赤くなっていた
青い世界で赤い瞳が遠くの遠くの空の向こうを見ていると
無数の星屑が落ちていく
ガラスの水車が時々まわって微かにクリームを混ぜている
自分にはそのクリームで前が見えないから
世界には青が降っているかどうか教えてくれと女は言った
炭酸を抜かないで
誰かの声を聴いた僕は静かに青を川に流した





世界には青が降っている
クリームで前が見えない


自由詩 アレジオン Copyright e.mei 2009-08-15 07:43:45縦
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