不死鳥の国 
服部 剛

人はいつか皆 
炎の内に燃える 
黒い影となり 
溶け去る 

異国の川の畔で 
数時間前に 
細い息を吐いていた老婆が 
白い骨になった時 

彼の脳裏に何故か  
旅立ちの日 
故郷の川の畔で 
いつまでも見送ってくれた 
小さい一人ひとりの顔が 
遠く霞んだ昨日から 
浮かんで来る 

その川面には 
無数の歪んだ時計の
長針と短針が逆回転しながら 
(白骨の欠片を間に間に) 
流れてゆく 

また、運ばれて来た誰かの黒影が 
炎の内に起き上がり、踊り 
不死鳥の姿をした煙が 
翼を広げ 
一瞬、空へと昇る 

瞳を閉じて、両手を合わせる 
人々の間に囲まれた金の炎が 
何時までも、燃えている 

その日の夕餉 
皿の上に寝かされ 
涙の潤んだ
一匹の魚と、目が合った 








自由詩 不死鳥の国  Copyright 服部 剛 2009-08-15 00:13:38
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