きこえる
within
僕は薬がないと正気が保てない
いわゆる非定型のメジャートランキライザーを
飲み続けている
ある日 声が聴こえたんだ
皆、死んだよ と
僕にはわからなかった
生きているじゃないか みんな
でもどこか本物っぽくなかった
みんな作られたサイボーグの質感がして
じっと僕は目を凝らした
皆、一度は死んだんだ
君も死なないと仲間に入れないよ
何を言ってるんだ
彼らは 昨日も今日も
生きていたじゃないか みんな
声は否定する 願いは無力で
声は 僕の死を願う
死ねば ぼくらの仲間だよ
一度くらい死んでみなよ
それが昼だったか夜だったか
ぼくは逃げ出した
けれども声は重なり連なり
どこまでもどこからも
聴こえた
それが幻なのか在るものなのか
わからないぼくは
躊躇した
いのちは永遠か?
真夜中の道の真ん中で
声に問いかけた
応えはなかった
ただ声は言った
「みんな一度は死んだんだよ」