不感症
本木はじめ

どこかで落下する
果物の感傷のなかで
頭痛がするすると昇ってゆき
遂にまくらだけを欲するくらい布団のなか
ぼくら季節から逃れた羊たちのように
こんばんわを言い続けてる
床の上からゆっくりと傾斜
畳の彼方に寂れた一組のブランコが
呼んでるから
ぼくら一目散に駆け出してゆく
きいきいきいきい腰かけては
何回もはじまり続ける
会話のための会話に夢中
望まれる直線的な安定を理解してはいるけれど
むしろ僕ら不安定なかたちを求める
錆び付いたチェーン握りしめれば
簡単さ単純な低空飛行の曇り空みたいに
どんよりできる
もはや頭上から降ってくるものに
怯えることもしない
どこまでもいけるかと問われれば
ぼくらは無粋
幾重にも目隠しをほどこしてはうなずくだろう
いけますん
寝癖から墓地
そんなにも遠い距離を歩きながら
くたびれてはぐんと空をみあげてあくびする
しびれをきらした星座たちが
十字に流れ出すみたく
きみのよだれによだれを重ね
いつの間にか告白している
きみはまるで弥勒みたいにかわいい
懺悔のようにしらじらしい映画のワンシーンのように
目を白黒させながらも
徘徊し続ける
街の骨董店の窓際で
金魚鉢のひとつでも覗き込めば
見えるさ
宙に浮く巨大な電信柱の真下を
ガスマスクを装着した迷子みたいに
歩いてゆく
ぼくらの恋の幽霊が


自由詩 不感症 Copyright 本木はじめ 2004-09-08 20:16:17
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