Like a rolling 結石
花形新次
ベッドで寝返りをうったとき
左の腰を
突然襲った鈍い痛み
ぎっくり腰なら
経験はある
食あたりなら
星の数ほどだ
だけど
今度のこの痛み
そんなものとは
ちょっと違うんだ
額ににじむ脂汗
鏡の顔は蒼白だ
絶え間なく続く鈍痛
そして吐き気
なのになぜだ
この身体
動かさずにはいられない
じっとしてなんか
いられない
暗闇の中唯ひとり
静かに歩き回る俺
傍からみれば
いつもより
元気ハツラツに見えただろう
「どうすりゃいい?
どうすりゃいいんだい、俺。」
一晩中
足踏みしながら
いつギブアップしようか
考えていたんだ
朝、おまえが起きるのを待って
おまえの運転する車で
海岸通りにある病院へ行った
「おまえは知らないだろうが
昨日の夜
俺はこの死ぬような
苦しみに
ずっと耐えていたんだぜ。」
俺は青白い顔のまま
小さく呟いた
おまえはずっと黙っていた
病院に着き
横になれと言われた
ベッドに腰を下ろした瞬間
本当にその一瞬
今までのあの痛みが
跡形もなく消え去ってしまった
まだ何もされちゃいないのに
「どうすりゃいい?
どうすりゃいいんだい、俺。」
混乱した俺は
悟られないように
苦悶の表情を続けた
だけど
やっぱり相手はプロだ
見事に見破られてしまったよ
「あなた、もう痛くありませんね?」
医者の言葉は冷静だ
俺は表情を元に戻した
原因は石だった
尿管結石ってやつだ
腎臓から膀胱に続く
尿管という名の長い一本道
そこを転がり落ちる石
そしてそのとき
人は
転がる石のように
痛みにのたうちまわる
痛みはそのとき限り
膀胱に入ってしまえばそれっきり
先っちょから
お石さまが
顔を出すのを
気長に待つだけだ
病院を出る頃
辺りはすっかり明るくなって
朝の海風がとても心地良かった
俺のことを祝福してくれているようだった
俺はもと通り元気になっていた
「折角だからどこか行こうか?」
明るい俺の問いかけに
無言のおまえは
車のドアを開けた
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パロディ詩