サラダとロカビリー
瑠王

馴染みの店の帰路にて
人もそぞろの夜の道
よく重なるのが偶然で
英国風の馬を駆る
ロカビリーに出会でくわした
逃避行に出かけようと
冴えない奴が言うからさ
ウィリーとエディの振りをして
エヴァに逢いに馬を駆る
ロカビリーの運転は
学生の頃とかわらない
馬への愛もかわらない
ただ成りだけは
妙にしっくりしちゃって
二人の会話もとぼけたままで
ラムのせいもあるんだけど
なんか久々
両手をひろげて
風を浴びたりなんかして
なんか前にもこんな日が
あったななんて思い出して
酒の飲めないロカビリーと
風のよめない風使い
エヴァは何処にもいないけど
冴えないドレスはあるかもね

赤信号で小柄な車が
窓から叫んで道を訊く
夏じいさんとレトリバー
このまま真っ直ぐだというと
のらくら車を漕ぎ出すから
病気になった兄弟に
トラクターで逢いにゆく
そんな映画を思い出した
追い越し様に窓から
出したレトリバーの顔が風で
歪んでるから笑って
手を振ってさようなら

過ぎてく街のはやさに
あの頃よりも
身近に死を感じるのは
ケーキの蝋燭が増えたせい
すべての道は死に通ず
そんな風に思ったら
今日なら死んでもいいかな
なんて
難解な言葉とか
もうどうでもよくなって
泣きたいんだか
笑いたいんだか
よめない風を見送って

だけど突然
サラダが食べたい
と思ったら
続くように
色んな欲が怒鳴り込んできて
信号が赤になる
ジプシーになりたいだとか
あいつらの結婚式
がもうすぐだとか
考え出したら
やっぱり
笑いたくて
ロカビリーと
空港を目指そう
なんて盛り上がって
カートも
バスキアも
27で死んだけど
ここには
ショットガンもなければ
気の利いた妄想もない
8月の少年達は
若くして桜花と散ったが
ここには
そんな理由もない
俺の死はサラダより軽い

酒の飲めないロカビリーと
風をよめない風使い
エヴァのいない飛行機を見送って
帰ったら、サラダを食べよう



自由詩 サラダとロカビリー Copyright 瑠王 2009-08-12 00:21:32
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