呪いと
砂木
歯が痛くて痛み止めを飲んだ
いつも飲みなれている市販の薬
しかし 全然きかない
夜中にあまりの痛さにとうとう
救急医療に電話をしてみる
ええ もっと強い薬を出すことはできます
ああ でも歯の治療は歯医者でなければと言う
ふらふらと 少し遠い救急医療のある病院まで
自分で車を運転していく自信がない
夫はお酒を飲んでしまっている
タクシー代は高すぎるし
ということで 朝まで我慢
何分かは寝たような気がする
耳の奥まで がんがんと痛い
黙っているのが苦痛で
洗濯してみたりご飯を炊いたり
どうしていいのかわからない
どうしてこんなに痛いのか
朝 とにかく歯医者の近くまで早めに行く
先生も困惑しながら治療
とにかくだして貰った強い薬を
薬局を出て すぐに自販機で買ったペットボトルで
体に流し込む
ああ 強い薬だ 効いてくれ頼む
わらにもすがるような気持ちで飲み干す
覚醒剤使用で逮捕された人と
私の違いは 合法薬と違法薬の違い
私は健康を取り戻し働くために飲み
逮捕された人は社会を忘れたくて飲み
ああ でも本当にそうだろうか
耳の奥まで突き刺すような痛みを鎮めるためなら
あまり変わりはないのではないか
処方箋に従い安全管理された中で
強い薬で痛みを忘れる歯車
それでやっと回っている日々だけど
覚醒剤は薬じゃないんだ
多分 種か胞子
体に植えられる 肉食植物
人食いの薬だ
食うか食われるか 遊び始めたらもう
人間じゃない 人苗床だ
強い薬が欲しい時
どこへ逃げたらいいんだろう
この体のために この体だからこそ
命のための祈りが欲しい