1102
唐草フウ

これから
あのおも苦しくて
食欲のない時に食べなさいといわれても箸がすすまずに
高い熱があるときに自力で病院まで這って歩くときのように
とんでもない大雨で身動きのとれないひとりの空間
エレベーターがとまってそこにたった一人の空間
心臓がどくんどくんどくん
とまらなくながれる
それはここに生まれた以上
見なくてはいけない現実

むしめがねで太陽を見る
まぶしさ
せみの鳴き声なんていない 夏
誰だって思い出したくないこと
あるでしょう
苦しいでしょう
見なくてはいけない現実

熱かったでしょう
苦しかったでしょう
淋しかったでしょう
痛かったでしょう
かなしかったでしょう

ごめんなさい
分からないのにわかったふうなことを書いてしまって


それが一分のサイレンの中に
すべて凝縮される
走馬灯が
虫酸が
鳥肌が走る
見なくてはいけない現実


しょうじき、もうこんなこと書きたくない
どんどん、偉そうになっていくから
あとに生まれたわたしには
なんにもわかっていないのかもしれない
わかってはいないのだ
だけど手を合わせてもいいですか
そうせずにはいられないのです

毎年のことなのに
毎年くりかえし同じように思う
思っている
くりかえし


一分間の鐘の音とサイレン
そのなかに蝉の声があることに救われる
そしてたくさんわたしから流れたなみだが
生きている液体が
すうっとそらの色へ帰り、見上げれば
青いものになって






自由詩 1102 Copyright 唐草フウ 2009-08-09 10:56:46
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