観念的な略歴(と、とりあえず名前をつけておく)
ホロウ・シカエルボク





俺が自分で何かを成し遂げたと思った時は
天にも昇るほど気持ちがいい
俺が自分の中にどんなものも見つけられないとき
濁った湖の底に沈んでいくような気持ち

だけどそんなことを延々と語ってみたところで何になるというのだろう
俺の気分なんて俺の書いてるものとはほとんど何の関係もないのだ

朝昼晩とすっきりしない空の下で、俺はいろんな場所へとゆっくりと移動して
面白い奴に会ったり生真面目なやつに会ったり
腹具合が悪くなるほど嫌いなやつらに会ったりしている
だけどそんな良し悪しについて語ってみたところで何になるだろう
そんな良し悪しはどんな人間の上にもそこそこ訪れるものだ
むしろ恵まれれば恵まれるほど
うんざりするような人間がまとわりついてくるものかもしれない

高架の下を自転車で流しているときにはポスターカラーみたいな青と白が急行列車を追いかけるように流れていたのに
ウチに帰る頃にゃ妙に色合いにこだわったグレーが広がって
スタンダード・ナンバーみたいな速度で雨がパラついていた
そういう時の雨は一番重たく感じるものさ
独り言を言いながら何かをする時間が増えてきたのは、腹の中だけじゃ消化出来ない物事がだんだん増えてきたせいなのか?

俺が自分で何かを成し遂げたと思った時は天にも昇るほど気持ちがいい、だけどそれは果たして本当に、結果として何かを成し遂げているのだろうか?
俺が自分の中にどんなものも見つけられないとき濁った湖の底に沈んでいくような気持ち、だけどそれは果たして本当に、俺はなにも見つけてはいないのだろうか?

70年代を背負って一緒に死んでいったバンドが歌っているとき
俺はぼんやりとしたイメージの中で結果について考える
今この時俺が考えていることは
きっと今すぐに答えが出るような事柄ではないのだ
疑問の始まりから幾つもの昼と夜が過ぎたときに、初めて結果というものが生まれてくるのかもしれない
何も手にすることがなかった、そんな気分が
幾つもの昼と夜が過ぎたときに大きな結果になることだってあるかもしれない
結果のために時は流れるのだ

俺が自分で何かを成し遂げたと思った時は
天にも昇るほど気持ちがいい
俺が自分の中にどんなものも見つけられないとき
濁った湖の底に沈んでいくような気持ち

だけどそんなことを延々と語ってみたところで何になるというのだろう
俺の気分なんて俺の書いてるものとはほとんど何の関係もないのだ
こうしてこれを書いている俺は
どれぐらい前の俺の結果なのか
なにを手にした時の俺なのか
あるいはなにをなくした時の俺なのか?
いつかそんなものについて語ることが出来るだろうか
遺跡発掘チームの調査結果の発表のときのように
俺は嬉々としていつかそんなものについて語ることが出来るだろうか
ああ、俺は心や時間の流れてゆく様を言葉にしようとしているのだ
他のどんなものにも興味を惹かれたことなどなかった
他のどんな価値観にもこれについて語ることは出来ない、俺がこうしたプロセスの中に
ひそかに見出している価値観以外には

いつかそれを見ることが出来るなんて保証はどこにもないけれど
見られるかもと感じているうちはどこまでも試してみるさ
もしかしたらそのうちのいくつかは手にしているのかもしれないが



そんなものあと何百回も寝てみないと到底気づけないからな





自由詩 観念的な略歴(と、とりあえず名前をつけておく) Copyright ホロウ・シカエルボク 2009-08-09 00:33:28
notebook Home 戻る