八月九日、帰り道
遊佐




カラカラに乾いておりました、

何もかもが強い陽射しに溶けて色を失い、

ただ真っ白に輝いておりました

遠くから観る僕は
映画館の銀幕よりも、いっとう大きな銀幕の一番前に立って、眺めているようでありました
大地を舐めるように広がる閃光と
突然、湧き出た巨大なキノコの形した灰色の雲に、
一瞬、魂が吸い込まれたような気がします

僕が知る一番より暑い、熱い風が…
僕の周りの全てを撫でつけるように過ぎて行ったのは、


大きな地震の、
ドーンと鳴った後のことでした


そうだ、帰らなくちゃいけないんだ
お昼は母さまと一緒に、
母さまと一緒に…
母さまと、……

とにかく帰ろうと、帰らなくてはと、なんとなく
ただ、そう思ったのです

帰り道、僕は
いつもよりゆっくりと歩いて行きました

何だか帰るのが怖い気がして、
ゆっくりと歩いて行きました

母さまが
僕を待っているから

あの大きなキノコの雲の真下で…。





自由詩 八月九日、帰り道 Copyright 遊佐 2009-08-08 14:43:30
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