切片
西日 茜

きのう おおきな おくり物をもらった
わたしには 少し 重い分量で
それは えらい人 の 気持ちのあらわれで
いくらか わたしは ためされているのだと思ったが
ことばを選んで 神妙になった
とても 苛々したので
帰りに スポーツジムに行った
若いインストラクターの男は 浅黒く鷹の眼で
夜は一緒に帰って そのまま朝まで寝た
彼と別れて わたしは 路地裏の酸素バーに入り
窓辺のステンドグラスが 光の透過を
無秩序に投げかけるカウンターの上の
クロコダイルのサイフの 筋を一本一本
指でなぞって しばらくぼうっとしていた
最大の問題の蓄積は
原点から 遠く離れた地点で 何かの関係性が
わたしを 形成しているという感覚だった
真夏の通り雨が 腐った魚の 吐き気がする臭いを
消し去る小気味良さに カラカラと笑った
少し 骨が軋んだ音がして 見上げると
黄色い空に たくさんの半透明の稚魚が 浮かんで
前に見た 水族館の 真っ暗な深海に住む
グロテスクな巨大魚に
どれも これも 端から ゆっくりとヤラレテいる
あの深海魚に似ているやつらに 
わたしは おくり物をもらった そして
いつかは ゆっくりと 食されてしまう
おくり物は 次から次へと 送られてくるので
わたしは それを 受け取り続ける
あなたと 遠く離れてしまったと
やっと気付いた


自由詩 切片 Copyright 西日 茜 2009-08-08 10:22:56
notebook Home 戻る  過去 未来