月夜甘露
木屋 亞万
日が暮れた
夜は歩かぬほうがよい
木が密になる
木が蜜になる
枝葉根幹にくすぐられ
心は山に押し込められる
たまらず虫を踏みつけた
甘い臭いに蓋をするべき
林は濃厚な闇になる
林は重厚な波になる
音は重なり合う
外には漏れない反響の渦
露が滴る幻痛を見て
皮の色が濃さを増すとき
森の明確な階層構造が露になる
森の厳格な愛情行動が新たになる
月明かりの真心は薪の代わりになりはしない
勇敢な白い警告はすでに路傍に臥している
雨に濡れた青い石ころ力を出せないまま
愛の手触りを確かめるように溝に埋もれる
空がぼんやり白むまで
夢を見ているほうがいい