海嘯
ジャイコ

美しい歌声が嘘を残して海に散る。
そんな憧憬をすぐに蹴散らす僕の耳。

悲しみの表面には君の笑顔が映らないように、
僕の涙の成分はすべて君への憎しみで出来ていて、
もう空に昇るのは雨の支配した時の音のみで。

瑠璃の焔は僕を焦がし、
ただ漏れる鬱屈した空気をせめて浄化する虹を探してさ迷う放課後。
袋小路では答えを造る果実も成らず。
ただ君の声にざわめく空へと回帰したいだけの小鳥を。


  どうか、彼女らに
  安らかな眠りを
  爽やかな目覚めを


ただ何気無く放った僕の青が、
降り止まない君の雨を浸食して融かしてしまう。
それは残念でもあるけれど、
非常に健全なことのようにも思える。

嘘で汚れた僕に絡み付く君の純白が汚れてゆくことに、
僕の心臓はぐずぐずと寿命を縮めていくばかり。

背中で感じた君の声に、僕の喉の奥で固結びされていた記憶が解けた。


  楽ばかりしていて、
  気づいたらもうこんなところ、
  誰か知ってるヒトはおらぬか、
  誰か私を知るヒトは、
  どうせ我しか見えておらぬ、
  他人のことなど誰も、誰も、


点滅する信号機を夜空に掲げ、
黄色い世界へと僕は舞い降りる。
雷雨を眺めながらじっとりとした空気を肺に含み、
白い魚たちが僕の瞼を閉じさせない。

赤い光が明滅するたびに逸る心臓が僕の指先を痺れさせてゆく。
もうどうしようもなくどこにも逃げられない。
赦されない黄金の空は空腹の代わりに何を遺したのか。

いろんな言葉が零れ落ちてきて、
多すぎる結末に僕は飲み込まれている。
口に含んだ君の香りは、
僕の手のひらに縋りついて離れない。

どうか、さいごまで、
さいごまで、、、


自由詩 海嘯 Copyright ジャイコ 2009-08-07 23:42:49
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