けーきのひ。
志賀羽音

 白い鳥たちが白い空に飛び立って消えてしまった。 少年は赤いリボンにくるまれたプレゼントを抱えて空を見上げている。 赤いリボンは見えない風にさらわれて、白い空に舞い上がった。

 夕暮れの暖かい光が赤いリボンに見えてしまった。 白から橙へ、橙から黒へと続く夕暮れのグラデーションを虹の七色のように数えて空を見上げる。 赤いリボンがなくなったプレゼントの箱を少年は赤い火にくべてかえした。


(真っ白なケーキには年の数だけ蝋燭が刺さり、それはまるで花のように咲いていた。 シャンデリアは騒がしくお喋りを繰り返して、パーティーのために用意した四重奏が台無しになっている。
 窓に切り取られたケーキのような月の下。 とうさまとかあさまのような星が踊っていた。
 お屋敷の門からは音が漏れだしていた頃。 少女の体が生クリームのように溶けてしまいそうだった。)


自由詩 けーきのひ。 Copyright 志賀羽音 2009-08-07 20:31:57
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