V
瀬崎 虎彦
そのようなわけで あたしは世界を語りなおすことにする
眼球のゼラチン上の表面を ツーと流れていく 有象無象
海原に繁茂する雑草は 水のビロードを刺す アイスピック
糜爛していく脳の恍惚を 過剰な愛情で繋ぎとめる事は出来ない
窓際で ぼくが死んでいた(ソファにぐったりと安らかに)
線路には 懐かしいベラスケスの大作(プラド美術館蔵)があった
耳障りな 自意識過剰と閉所愛好を回転させて 神経症的に
回転する捩子と それが締め付ける年齢を記入する 不安たち
投函されて宛先にたどり着くまでの旅を思うよりも
目的地にたどり着かない事が メッセージの本義 両義性 不義
時々悲しい気持ちに襲われるのは身体のなかに誰かの身体があるからだ
雨が降り出して すべて側溝に吸い込まれていく 経血とともに
小さなころから不思議なんだけど どうして人生の「どうして」を問わない?
闇雲に怒ってみても 答えはなく 歩いて帰る 暗い小道に VIOLA