燃やせない記憶の廃墟の中で
瀬崎 虎彦

川沿いに 鉄橋をくぐり
舗装がない場所も ぐんぐんと
前へ 前へ 赤錆びた
よき死者たちの 記憶の中へ

道すがら ネコが驚いて
逃げ出したり 道を譲ったり
時々は 水の流れにのって
ネコの屍骸がぼくを追い越していく

帰って来れない人たちが 生き その生きていたころに 記憶して
お互いを記憶することで 仮構されていた居場所というべきもの
記憶されなくなって ここにたどり着いた 持ち主不明性

産廃の処理工場みたいなゴウゴウ音がする感じの 行き止まり
そうしてわかったのは 期待に反し 何も哲学的なことでない
大事なことを忘れてはいけない 忘れられないから大事なんだ と


自由詩 燃やせない記憶の廃墟の中で Copyright 瀬崎 虎彦 2009-08-05 22:59:27
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