私とチョコレート
ゆるこ
コンビニで105円のマカダミアチョコレートが発売されたのを知ったときは発狂しそうになった
Suicaのワンタッチで体が欲するチョコレートが買えるのだから
目眩で空が半分ちぎれてしまった
それくらい狂喜することだった
私のSuicaにはとにかく毎日ちまちまとチャージされた小銭達が寄り添っている
きっといつかマカダミアチョコレートになってしまうことを知ったから
今までがちゃがちゃと他のものに変身することをやめて
息も絶え絶えにひっそりとうすぺらな
磁気カードの中で老後を過ごしているのだろう
一歩進む度に口内が五回、天変地異を起こす
その度にかみ砕かれるマカダミアチョコレートはさくさくと
おかあさんの名を呼びながら消えてゆく
私はその音が大好きだ
人身事故があった
毎日使う黄色い列車はまた一つ間違えた魂を浄化させた
ホログラムが見えた気がしたがきにしないよ、私はまだいきるのさ
今日はチョコレートを多めに買った
歩きながら食べる私はさながら飢餓の境地に立つものの目になっていたのではないかとふと、思えば
昔すきだった柔軟剤の香りを纏った人々が脇を通り抜けていった
私は口に運ぶ手を休めない
孤児のように ずるずると歩く
歩け 歩け
原動力はまだある
唇の端から垂れはじめた黒い血液は、一時的な麻薬
まだ 生きてるぞ
まだ 歩けるぞ