夏の庭
石瀬琳々

ひそかな風にあおられて
梢の葉裏がひるがえる
なぜなのだろう なぜかしら
瞳の奥がかすんでくるのは


指先をのばしても
風はすり抜けるばかりで


あなたは黙って
傍らの草をむしり取る
その指がいつしか
わたしの心を蝕んでゆく


何もいらない 欲しくない
瞳だけで囁くやわらかな時


   こぼれてしまうから
   花のように
   そして読みとって
   わたしの唇を


静かな夏の陽がのびて
二人の額に影を落とす


あなたとわたしはまだ子供のまま
夏の庭で戯れる



自由詩 夏の庭 Copyright 石瀬琳々 2009-08-05 13:44:36
notebook Home