びわの木
……とある蛙

生まれた家の前 
坂の途中に
おそろしく大きな石の門が
その中に白い木造洋館

年老いた医者のいる医院で
診察室の窓枠は
白塗り木の窓枠
窓の外には枇杷の木が…
枇杷の葉が風に揺れていた。

患者のほとんどが底の街の子供たちで
窓の外 枇杷の木が……
枇杷の葉が風に揺れていて
それを眺めながら
皆、目の縁に涙を浮かべている。

決して注射はしない医者だが
親はいつも注射を持ち出し、子供を脅す
注射と苦い粉薬は
子供たちの恐怖だ。

枇杷の木は優しく子供を見つめ
子供は目の縁で涙をこらえながら
枇杷の木を眺めている
シロップの薬がもらえることを祈って。

すべてがモノクロームだったような気がする。



自由詩 びわの木 Copyright ……とある蛙 2009-08-05 12:10:12
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