水彩絵の具を、水に溶かして
かなた蒼空


僕の眼球が世界を三つの色だけで映すようになったとしたら、君は何色に見えるのかな。
僕はそれを知らない。
神様が罪を産んだときからずっと、世界は色で溢れていたから。
だから僕は目を閉じて、世界に一度、色をなくす。



例えば、青空みたいな綺麗な青は如何でしょうか。
確か君は海が好きだったので、あの海原のような蒼でも構わない。
君の隣りに立つと、いつだって小波が聞こえるのだろうね。きっとそれは、仕合わせだろうね。



例えば、夕陽のように静かに燃える橙は如何でしょうか。
確か君は蜂蜜がお気に入りだったので、蜂蜜色でも構わない。
君の隣りに立つと、いつだって甘い匂いがするのだろうね。きっとそれは、仕合わせだろうね。



例えば、君の髪みたいに艶めく黒は如何でしょうか。
確か君は星のない空が好きだったので、夜空の黒でも構わない。
君の隣りに立つと、いつだってお月さまの光がいるのだろうね。きっとそれは、仕合わせだろうね。



黄色のバケツに水をはって、茶色いパレットを取り出す。緑の筆を持ち、白い画用紙に鮮やかな君を描く。
ぼやけた輪郭が、君らしくて。

三色の水彩画。


自由詩 水彩絵の具を、水に溶かして Copyright かなた蒼空 2009-08-04 00:09:38
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