検体記
ogawa hana


蔓のような情欲だった。昔はもっと好かれていたような気がするんだ、赤の他人にもね。
肌に張りがなくなったとか、心の声で言うのかい。でも以前は人の眼を見るということを
しらなかったんだ、真実を隠しつつ、砂場にはトンネルを作った。久しぶりにてんとう虫
をみて、気持ち悪がった、私は成長したのだろうか。ぎりぎりと限界まで締められたボル
トを緩める気力も無く、慢性肩こりです。眠りに落ちるときと、死ぬときは似ているのだ
ろうか。毎日のように考えるよ。まるくなって爪を切るとき、祖母の姿がふっと浮かんだ
りする。追いつかないんです。思考さえも私を置いていく。夜は相変わらず良く見える。


撫でるかい、撫でてください
頬を伝って、鱗や尻尾へ
見えますか?夜だから。よく見えるはず、そうだ、そのはずなの、
手探りをして、よく見えるはず、なのに、
繭のようなかたまりがごつごつ膝にあたるので、電気をつけてほどきかたを考える



大人になって、名前で呼ばれるようになったのは、シュークリームを上と下 半分に分け
て食べるようになったころからだから、きっと関係あるのだと思う。でもハンバーガーは
分けて食べないから、関係ないと思う。死ぬとか死なないとか、他人事ではないだろうか
、と思うとき、私の目はきっと見えていない。



そもそも、近づこうとしたのだろうか
昔、もっと好かれていたのは、てんとう虫を見て平気だった頃です
繭が剥き出しになって今 正座が辛くなってきました
点滅する街灯を、バックミラー越しに見る帰り際
君の姿は無いことが多い




共感、なんて ざわつく言葉を心を込めて発する君が好きで好きで
私まるで乙女のように戦慄してしまう
煌々と蛍光灯の照る下で
今夜は幾年振りに 肌を濡らしたんだ、わかるかい?








自由詩 検体記 Copyright ogawa hana 2009-08-02 20:22:25
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