ある夏の背中
こしごえ

それは、背中で引戸をしめて
出て行きました
それを、見送った
濃紫している縁の眼鏡に映る
グラスと氷水を
小刻みにゆらします、と
氷たちの涼しくかろやかな音
生ぬるい空気を透過します
星が、降っています
いつも いつでも
ひとのねむる時やほほえむ真昼にも
お元気ですか
羽が繁ります
秋には赤赤、と染まり まして
おも影の視線は行方知れず
風が、あったという その日
わたしはまだ 生まれていなかった。
母の背中はちいさく いまも、
泣けない赤子を背負っている
縁側から みえる
風も ない夕空に
一途のこうもり
ふりやまずとことんとんとん






自由詩 ある夏の背中 Copyright こしごえ 2009-08-01 04:41:31
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