反逆する風景
熊野とろろ
電子時計が0時00分と日付、室温を示している
街路で発狂したような救急車のサイレンが響きわたる
長く続けていた会話が閉ざされる
無機質な室内に空調の音が呻いている
自動ドアは休む間もなく開閉を繰り返す
夜中の窓ガラスに見知らぬもの同士が映される
ヘッドライトが暗闇を繊細に傷つけてゆく
言葉が幾重にも連なり時間を蝕み続ける
夜も更けると人々は記憶をなくす
翌朝の食卓風景を壊しはじめる
数千もの錯覚をし憧れだす
それらが道端に散らばり悲しくごみとなる
風景は手を休めない
絶えずことごとくを描写する
なのに風景はがらんどうだ
無秩序に誰彼なく突き刺していく