ゴースト(無月野青馬)

薄闇
床闇
死が詰め込まれて
予行演習しているかのような工業団地付近


(よく見ろ)
(貘だ!)


切れ長
面長
薄紅
薬指長い
ソリに乗った卵形
颯爽登場
詩と死に興味を持った少年の部屋へ難なく侵入


枯れ草を出せと脅す手口は混乱を呼んで鮮やかだね
クラス会で使うくす玉用の折り紙を渡すしかない少年涙目
光の加減で上半身が点滅してるように見える
ソコに
折り紙の裏に書きかけていた詩まで貼り付けられたから少年困惑


「お前、詩を書くのか」
「他にもあるんだろ」
「ノート見せてみな」
「いいからいいから」
「悪いようにはしないから、な」
「早く貸しな」


次の瞬間
詩作ノートを飲み込まれた!


しばらくしたら
貘が言う


「お前、ヘタクソだよ」
「ヘタクソだけど」
「そこそこ面白ぇから」
「全部喰っちまう」
「ノートじゃなくてこっちをね」


人の頭飲み込む時、顔、カンガルー似
少年爆笑
(その隙にパクリとやるのか)
(貘め!)


コツコツ
食べる時蹄が鳴ってる
アレアレ?
何かに似てる
ハンプティ=ダンプティ?
口元に折り紙付いてるよ


薄情
拍車
翌日も
別の団地にソリが停まってる
悲鳴の代わりの笑い声聞こえてくるから
今日も仕事してるんだね
きっと今夜も
色んな妄想とか詩を食べているに違いない


(貘め!貘め!貘め!貘め!)
(息子の夢を返せ!)





自由詩Copyright ゴースト(無月野青馬) 2009-07-30 03:22:48
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