ありふれた痛み
月山一天



強気になって
世を吸い込む。

どんな詩人も書きえぬ悲しみを
歳老いた8月に
ひたすら閉じ込めて。

別室で寝る夫婦。
話す事を忘れた兄。
母を知らない父。
家を無くした姉。
我が子を怖がる母。



世を。
この世を浸す隠れた悲しみ。
溢れすぎて、
見落された痛み。

普通すぎて、
ニュースにもならない。

身近な事程

気づこうとしない私に

弱気になって

また

この世を吸い込む。


自由詩 ありふれた痛み Copyright 月山一天 2004-09-07 13:23:56
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