ツルレイシとさくらんぼの関係
あ。
仕事から帰ってきたきみが珍しく
お土産があるよだなんて言ってかばんを探り
よれたスーパーの袋を差し出した
縛ってある口をほどいて覗き込むと
ふわりと青い匂いが鼻腔に飛び込んでくる
そっと触れればごつごつとした独特の肌触り
しっかりと実のつまったツルレイシが袋の底で
さかさかと身体をこすり合わせていた
友人の子どもが理科の授業で育てており
収穫した実を持ち帰ってきたので
おすそ分けでもらってきたのだという
八百屋の店先で見かけるような綺麗な瓜型ではなく
二つとも身体全体が不格好に傾いている
それは小学生の頃に連れて行ってもらったサーカスで
おどけて踊っていた道化師にどこか似ている
せっかくだから料理に使ってといわれたが
今まで調理したことのない食材なので困った
実家にいた頃、母が時々作っていた
ゴーヤチャンプルしか思い浮かばなかったので
わからないなりに見よう見まねで作ってみる
きちんと母に聞くなり調べるなりすればいいのに
それをさぼって作った初めてのゴーヤチャンプルは
火の通りは甘いしツルレイシは苦いしで散々だった
にがうりという別名が本当にぴったりとはまり
今まで食べたものは苦味をある程度抜いているのだと知った
舌をごまかすために白いご飯をかきこみ
食後にさくらんぼをぽこぽこと口に放り込む
甘酸っぱさがそれまでの苦さを中和する
硝子の器に楕円の種が積みあがるのを見て
ふと、育ててみたくなった
ツルレイシとさくらんぼは
おとことおんなの関係のようだ