首都
たもつ

 
忘れ物のような話をしました
ただ長いだけのベンチがあり
終わりの無い話を続けました
読みかけの本が無造作にふせられ
背表紙は少し傷みかけていました
マリエはすぐに人を殺そうとする
けれどマリエはもういないので
誰も殺されることなく
話だけが続きました
話の途中何度かの言い間違いがあり
そのいくつかは訂正され
残りはそのままでした
心臓に一番近い駅を知っている
マリエは言いました
小さな駅なの
小さな駅前に
古い本屋さんと中華料理屋さんがあるの
そこに心臓があるの
マリエは浴衣が良く似合い
嘘をつきませんでした
これから見に行こうか、とマリエは言いましたが
マリエはもういないので
これから、も
見に行こうか、もありませんでした
マリエと最後に見たのは
公営住宅の三階か四階の
狭いベランダに干されたシーツでした
もしかしたらただの白くて大きな布、
というだけだったのかもしれませんが
二人ともシーツ、と思って
シーツ、と言いました
首都が終わりをむかえるころ
ベンチに木漏れ日が落ちて
模様のように綺麗でした
そしてそのころになると
どこまでも話だけが続いて
すでにわたしの姿も見あたりませんでした



自由詩 首都 Copyright たもつ 2009-07-29 19:34:18
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