無人の家
服部 剛
夕餉の向かいの空席に
在りし日の祖母を浮かべて
問うてみる
(聖なる世界はどうだい?)
初老の親父と母ちゃんが
娘の嫁いだ富山へと
生まれて間も無い
孫息子の顔を見に
飛んでいった日
祖母が
この世の白い出口へ
今にも吸い込まれそうな時
明け方の夢の中で僕の名を叫んだ
あの声を、思い出す
(今、ラジオから、流れ始めた
The long and winding road)
僕は白飯を噛む
誰もいないように
がらんとした、広い家で。
自由詩
無人の家
Copyright
服部 剛
2009-07-28 23:39:01
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