夏のヴェランダから
瑠王
なんだか懐かしい晴れ間 太陽のもとなのに水の中のような
切り落とした断崖から現れたのは夏だった
緑は黄色く笑い 雲は水の空にとけてゆく
遠くで見ている陽炎が意識を惹きつける
誰かの窓で震えた
日光が時々私の目を驚かせる
隣接したヴェランダ 赤い炎の女性
(呼んでる気がする)
(君を?)
(違う、私が)
(何を?)
(私を)
(なら呼んでみるといいよ、君も)
焦躁の火も悲境の火も
みんな雨を待っている
リズムの支配を逃れて 蝉が輪唱する
遠のいたり近づいたりして そこにいたのはやっぱり夏だった
(比較的 彩度の強い まだ新しい)
昨日までが別の人生だったように
たった今生まれたんじゃないかと、時々思えて
夢中になる だけど大気が首を振っている
正体も明かさずに去ってゆく懐かしい香り
両手がとらえようとしても
遠くで見ている陽炎が意識を惹きつける
(こんなにも晴れているのに水の中みたい)
(だったら青い炎の方がいいかな)
(いいの、だって夏だから)
遠くのヴェランダで風鈴が鳴る
(アイスのアをとって 少し休む)
(アイスのイをとって その先へ向かう)
(アイスのスをとって 思い出す)
でも気づいた頃には溶けてしまう
夏のヴェランダ 安らう日
(見えるかな)
(何が?)
(花火、だって夏だから)