ら・せん か・せん
竜門勇気


月夜にあのこは変化する
みまたの槍もつライオンに

紙で包んだ かみそりを
ぼくに渡してくれたけど

いつまでまっても、どこからも
一粒の血さえ滲まない

猫にまじないかける時
ぼくは彼女に見とれてた
カトレアの葉を一掴み
喉に圧しこみ笑ってる
ぴょんとひと跳ね天空へ
落ちてったっきり帰らない
あのこの背中に乗っかって
絵の具の色をかぞえたい

カエルのくちびる触れた手で
あのこの額に文字をかく

紙で包んだ かみそりは
けっきょく錆びてて使えない

ふたりの儀式がおわるまで
きれいな石をあつめよう

くびれた月から飛んできた
知らない誰かの似顔絵に
赤い花たち群がって
赤い花粉を撒き散らす
あのこはまだまだかえらない
ぼくの目玉は晴れ上がる

ら・せん らららら・ら
か・せん らららら・ら
ら・せん らららら

みっつの毒を渡されて
ねがいごとを訊いている

暗い木陰は青ざめて
召使いたちを呼んでいる

まぶたの裏から声がして
あのこの匂いをおもってる

ら・せん かわいた呪文を読みながら
か・せん かえってこれない場所へ行く
ら・せん あのこがかえってこないから
らららら・ら 錆びたかみそりは錆びたまま

大きな満月 映ってる
水面はだんだん細くなる

月は細さにたえかねて
とうとう見えなくなっちゃった

あのこをのせた満月が
とうとう見えなくなっちゃった



自由詩 ら・せん か・せん Copyright 竜門勇気 2009-07-28 12:19:32
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