手紙
松本 涼
暦を焦がすようにして
君を忘れていきます
久しぶりに私の想像するところ
君は今でも顔の前で手のひらを上に広げて
風を乗せたり散らしたり
不明瞭な気配を集めたりして
今日を楽しんでいるのでしょう
穏やかな街に越しました
辺りはそれぞれに静かです
夕暮れの色が変わりました
昔にも見なかった色です
あちらへこちらへと
矢印の先を動かしたりもしてみます
それでも軸はびくともしないで
人というのは頑固なものだなあと思います
私の部屋では今
小さな植物が育っています
いくつかの鉢が枯れた後でも
生き残った綺麗な緑です
機会があれば
その葉を想像してみて下さい
それではまた
一緒に坂を登れたらいつか
それから
久しぶりに
というのは嘘です