水筆のラブレター
ゆたんぽ

ねえ、きみのなかに、
どれほどたくさんのきみが泣いているのだろう


たくさん、あふれだすたくさんのきみが、こだまする


**


ポカリスウェットとポカリスエット、どっちなの?
首をかしげながら、
スウェット?スエット?って何回も発音するきみが
ぼくは、
たまらなく、好きなんだ
ねえ、知っている?
その首の角度でなければ、ぼくはきみが大嫌いだったんだ


ワレワレハ、チキュウジンダ
のどぼとけを何度もたたきながら、
宇宙人のマネをしても、
いつまでも地球人のままなきみが
ぼくは、
たまらなく、好きなんだ
ねえ、知っている?
二人が違う星に生まれていれば、ぼくはきみを殺していたんだ


かたつむりの足腰って、じつはすごく強いのよ
雨の日の歩速が、
かたつむりのように遅いきみが
ぼくは、
たまらなく、好きなんだ
ねえ、知っている?
その歩速でなければ、ぼくはきみに足枷をはめていたんだ


わたしって、アンパンマンよりバイキンマンみたい
あんぱんをいっぱいに頬張りながら、
すこし俯くきみが
ぼくは、
たまらなく、好きなんだ
ねえ、知っている?
きみがバイキンマンでなければ、ぼくは食パンを愛していたんだ


ハローグッバイ!
出会いのあいさつに、
さよならの意味なんてまるで知らないように、
そう言って笑うきみが
ぼくは、
たまらなく、好きなんだ
ねえ、知っている?
きみがさよならの意味を知っていれば、ぼくはきみを愛したりはしなかったんだ


**


ねえ、幸せってクモの巣みたいね
捕まったら身動きできなくなって、きっとどこからか悲しみが八本の足で迫ってくるの


ねえ、愛ってなんなのか
たるんだ糸電話で話してみない?


ねえ、水筆で、
ラブレターを書いてみない?


**


たくさんのきみが呼吸する


ねえ、息をすって、




自由詩 水筆のラブレター Copyright ゆたんぽ 2009-07-27 17:25:25
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